なぜ私は顔ではなく身体を見るのか

「先生、顔だけやってください。」
施術の前に、そう言われることがあります。
小顔になりたい。
フェイスラインを整えたい。
むくみを取りたい。
そう思えば、顔だけを施術してほしいと考えるのは自然なことです。
しかし私は、その言葉を聞いても、すぐに顔へ触れることはありません。
まず立っていただきます。
足裏の重心はどこにあるのか。
骨盤はどのように支えられているのか。
背骨はどんなカーブを描いているのか。
肩の高さや首の位置はどうなっているのか。
呼吸は胸でしているのか、それともお腹まで使えているのか。
口は閉じられているのか。
舌は本来あるべき位置にあるのか。
私は、こうした身体全体を観察します。
なぜなら、顔だけを見ても「結果」しか分からないからです。
例えば、フェイスラインが左右で違う方がいます。
その原因は、本当に顔だけにあるのでしょうか。
片足に体重をかける癖。
いつも同じ方向で荷物を持つ習慣。
片側だけで噛む癖。
浅い呼吸。
舌の位置。
食いしばり。
こうした日々の積み重ねが、筋肉や関節のバランスを少しずつ変え、その結果として顔の左右差が現れていることは少なくありません。
顔は、身体が積み重ねてきた歴史を映し出しています。
だから私は、顔を「直す」という考え方ではなく、「読み解く」という考え方を大切にしています。
顔は身体からのメッセージです。
「ここに負担がかかっています。」
「呼吸が浅くなっています。」
「身体のバランスが崩れています。」
そんなサインを、顔は静かに教えてくれています。
そのサインを無視して顔だけを整えても、根本的な変化にはつながりにくいでしょう。
逆に、身体の使い方が変われば、顔は驚くほど自然に変わることがあります。
実際に施術をしていると、「今日は顔を触っていないのに、フェイスラインがすっきりしました」という声をいただくことがあります。
これは特別なことではありません。
姿勢が整い、首や肩の緊張が和らぎ、呼吸が深くなれば、血液やリンパの流れも変わります。
その結果として、顔の印象が変化するのです。
つまり、美しい顔をつくっているのは顔ではなく、身体全体なのです。
私は整体師として、美容と健康を別々のものだとは考えていません。
身体が本来の機能を取り戻せば、健康だけでなく、美しさも自然と表れてきます。
だから私は、顔だけを見ることはありません。
身体全体を一つのつながりとして見ています。
それが、私の施術の原点であり、この教科書を通して最も伝えたい考え方です。
次回は、多くの方が経験している「小顔矯正を受けても元に戻ってしまう理由」について、身体の視点から考えていきます。
顔は結果。
身体が変われば、顔は変わる。

